遺言書に似た言葉に「遺書」という言葉がありますが、「遺書」について、これまで一度も聞いたことがないという方は少ないと思います。
「遺書」と聞いて思い浮かべるイメージは、生前最後のメッセージをしたためた書面というイメージが一般的です。
では、この「遺書」と法律上の意味における「遺言書」にはどのような違いがあるのでしょうか。
単なるメッセージを残した遺書と遺言書の違い
遺書と遺言書は、自らが他界することを想定して作成される点では同じです。
しかし、まず、単なるメッセージを記載した遺書の作成については、その様式・ルールに法律上の定めはありません。
これ対し、遺言書の作成には、法律上の厳格な様式・ルールが存在し、その様式・ルールを逸脱した遺言書は、結果的に無効と扱われてしまうことがあります。
また、遺言書には、法律で定められた様式、ルールに則って作成することにより、法律上の効力が与えられます。この点も、単なるメッセージを記載しただけの遺書と遺言書の大きな違いです。
このように、遺言書は、遺書と異なり、法律上の様式・ルールに則って作成しなければならず、かつ、遺言書には、法律上の効力が付与されるため、その作成に当たっては、どうしても法律上の知識が必要になります。
そのため、遺言書の作成は、弁護士としてもよく相談を受ける業務の一つとなっています。
遺言の種類
通常時における遺言には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つの種類があります。遺言書は、この3つのうち、いずれかの方式に従って作成しなければなりません。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、文字通り、遺言者が遺言書を自筆で作成した遺言です。
自筆証書遺言を作成する場合、その全文、日付、氏名を自筆しこれに押印して作成する必要があります。
最も容易に作成できる反面、様式面での不備や遺言の効力の有無、その文言の解釈などが後になって問題視されることも少なくありません。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公正証書で作成した遺言です。
公正証書遺言は、公証役場で業務を行う公証人の関与の下で作成されるため、様式の不備や効力の問題などが生じにくい点に大きなメリットがあります。
なお、北九州では、小倉北区と八幡西区に公証役場が所在しており、各公証役場において、公正証書遺言を作成することが可能です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、公証人などに封印した遺言書を提出すること等によって成立する遺言です。
生前において、遺言の内容を秘密にしておきたいが、遺言書の存在は明らかにしておきたいという場合に利用されます。
秘密証書遺言には、文字通り、遺言の内容を秘密にしておけるという点にメリットがあります。
遺言書の内容
<遺言事項について>
遺言書には、法的効力を有する種々の事項を記載することが可能です。その代表的なものとしては、たとえば次の事項があげられます。
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・相続分の指定
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・遺産分割の指定
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・祭祀の主宰者の指定
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・遺贈
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・認知
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・遺言の執行に関する事項
上記のような各種遺言事項に関する意思を法律上の様式・ルールに従って遺言書に記しておくことで、遺言書に記した最後の意思を自らが他界した後において実現することが法的に可能となります。
たとえば、「不動産Aは、自らの死後、長男に相続させる」というような意思を遺言書に記載しておくことも可能です。
<付言事項について>
なお、遺言書には、法律で定められていない事項(付言事項)も記載しておくこともできます。
たとえば、子供たちに「仲良く暮らすように」と書いたり、「葬儀は親族だけで行うように」などと書いたりすることができます。
この付言事項には、法律上の効力はないものの、遺言者の最後のメッセージを残しておくという点では、有力な手段です。
たとえば、子らには私が他界した後の妻を支えてもらいたい、等と記載しておくことで、事実上、子らにその意思の実現を期待することができます。