今日は、弁護士に仕事を依頼する場合に作成する委任状について説明をします。

弁護士に対して依頼をするということは、日常生活において総多くはありません。そのため、委任状を書いてくれ、と言われても、不明な点など多々出てくると思います。

そこで、今日は、弁護士に対する委任状の書き方などについて、関連情報も併せて解説します。

委任状とは

まずは、委任状について簡単に説明をします。

委任状は、業務を依頼することを証明する文書
委任というのは、平たく言えば、弁護士に業務・事務処理を依頼することを言います。

そして、委任状は、委任関係にあることを証する書面です。したがって、委任状は、依頼者が弁護士に対して業務などを依頼していることを証明する文書ということになります。

後で触れますが、依頼者を代理して訴訟手続を弁護士が行う場合、裁判所に提出して、弁護士が委任を受けていることを証明します。

委任契約書との違い

これと似て非なる書類として委任契約書があります。委任契約書は、弁護士に対して業務を依頼する場合の依頼者・弁護士の権利義務関係を記載した書面です。

委任状には、弁護士にいくら費用を払ったかなどは記載されないのに対して、委任契約書においては、弁護士費用や業務範囲などが記載されています。

委任状の種類

弁護士に対する委任状は、弁護士が行う業務に応じて無数に種類があります。そのなかでも代表的な者は、次に述べる通りです。

訴訟委任状

訴訟委任状は、文字通り、訴訟提起・追行に必要な書類です。弊所でも、一番使う委任状です。

強制執行委任状

また、弁護士は、訴訟手続の他、強制執行などについて依頼をうけることがあります。この場合、裁判所によっては、「訴訟委任状」では手続を受け付けてもらえず、強制執行のための委任状を作成して提出を求められることがあります。こうした場合に作るのが強制執行の委任状です。

家事手続委任状

弁護士は、離婚や相続など、家事手続、家事事件について依頼者を代理することがあります。
たとえば、離婚調停などの家事手続は、「訴訟」そのものではありませんので、調停手続において、本人が依頼者を代理するため、作成が必要になります。

ちなみに私が弁護士になりたてのころは、弊所の最寄りの裁判所である福岡家庭裁判所小倉支部においては、訴訟委任状でも、家事手続の受け付けをしていたように思いますが、今は家事手続委任状の作成を求められます。

その他

その他、たとえば、民事調停に関する委任状や労働審判、自賠責保険請求に関する委任状など、委任状の種類は多岐に渡ります。また、単純に交渉のために用いる委任状もあります。

委任状に関する注意点

次に弁護士に対する委任状に関して注意点を挙げます。

委任状は通常、弁護士が書式を準備してくれる

上記のような委任状ですが、まず作成に際して、依頼者に「委任状書いてきて」と丸投げする弁護士はいません。確認したわけではありませんが、いないと思います。

通常は、法律事務所・弁護士側が、受任者・委任事項や依頼者にご記載いただく内容を記載した書式をお渡しして、それに記載してもらう、ということをします。

未成年者が依頼者本人となる場合

未成年者が依頼者本人となる場合、通常は、親権者が法定代理人として委任状を作成することになります。

たとえば、未成年者A法定代理人父山田太郎、同法定代理人母山田花子などと氏名を記載してもらうことになります。

委任状の提示義務について

交渉段階において、弁護士が相手方に委任状を見せなければならないという義務はありません。現に、お見せしないことも多いです。

他方で、交渉の相手方から、本当に依頼を受けているのか、委任状を見せろ、と言われたとき、こうした場合においては、相手に提示すること多いと思います。

そもそも、委任状は、委任関係にあることを対外的に証明するための書面ですので、交渉相手にこれを提示するのは、委任状の本来的な使い方に沿うものでもあります。

委任状の書き方

以下、訴訟委任状をベースにサンプルを示します。

青丸のところは、誰に依頼するか、誰に対する裁判、なんの事件を依頼するか等を書く部分ですが、法律相談の上、法律事務所側において記載事項を準備・記入することが多いと思います。

そのため、依頼者側において、記載するのは、赤字の部分が多いと思います。要は、住所・氏名です。

自筆か記名か

住所・氏名欄について、弊所では、依頼者が個人のお客様の場合は、記名(パソコンによる出力)ではなく、自筆での記載をお願いしています。

記名だと、裁判所が受け付けないという運用にはなっていませんが、委任状は、本人意思を確認するための重要書類ですので、手書きでの記載をお願いしています。

他方で、法人・会社代表者に委任状を作成していただく場合は、社判と法人印で住所・社名・代表者名を埋めていただくことが多いです。

認印か実印か(印鑑証明書の要否)

上記委任状のサンプルを見ていただきたいのですが、印鑑を押す欄があります。

この捺印部分ですが、弁護士に対する委任状を作成する場合に、必ずしも実印で捺印される必要はありません。よく聞かれるのですが認め印で構いません。そのため、多くの場合、印鑑証明も不要です。

ただ、銀行などで行う相続手続など一定の場面では実印を要求されることがあります。

その場合は、実印でお願いします、印鑑証明書もご準備ください、弁護士側から説明があるのが通常です。

捨て印について

弁護士・法律事務所においては委任状に捨て印をお願いすることもあります。

ご依頼の法律事務所・弁護士から捨て印の要否についても通常は説明があるはずです。ご不明であれば、ご依頼された弁護士にその要否をお問合せいただくのがよいと思います。