弁護士として仕事をしていると、案件によっては、裁判所への提出の必要がある、といった理由から、住民票や戸籍謄本を収集しなければならないことがあります。

通常、第三者の住民票や戸籍については、その取得について限度があります。個人のプライバシーなどが記載されていますので、取得は、およそ容易ではありません。

他方で、弁護士など法律専門家は、一定の要件の元、職務上請求という形で第三者の戸籍や住民票を取得することが可能です。

戸籍の取得の根拠について

戸籍の取得について、職務上請求が認められる根拠は、戸籍法に記載されています。

ちょっと、規定が長いので、ポイントだけ記載すると、戸籍法10条の2第3項には、
「弁護士」は、「受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。」と記載されています。

また、同4項には、弁護士は、受任している事件について、次に掲げる業務(弁護士にあっては、裁判手続又は裁判外における民事上若しくは行政上の紛争処理の手続についての代理業務)を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる、との趣旨の記載があります。

そこで、たとえば訴訟手続を受任しており、その手続を遂行するために必要がある場合、弁護士は、戸籍法に基づいて戸籍謄本等の交付を請求できるわけです。

北九州でも、弁護士であれば、上記条件のもと、たとえば、小倉北区役所などに対して職務上請求を行うことで、戸籍を取得することができます。

住民票の取得の根拠について

住民票については、住民基本台帳法12条の三の第2項、第3項に記載があります。

住民基本台帳法12の三第2項3項は、弁護士について要約すると、住民基本台帳について弁護士から、弁護士が受任している事件等の依頼者が、住民票の写し等が必要である旨の申出があった場合、それが相当と認めるときは、当該住民票の写し等を交付することができる、との規定です。

住民票は、裁判管轄の確定や送達の為などに必要となることが多いです。福岡地裁小倉支部では自己破産などでも必出の資料とされています。

受任が必要

弁護士は、上記のように、受任している職務について、一定の場合の戸籍謄本や住民票の写しを取得することができます。

たとえば、遺産の承継についていうと、戸籍が収集できないと仕事ができませんし、お亡くなりになった方の最後の住所地が明らかでないと、事件を管轄する裁判所も割り出せないので、家事手続が進められません。

こうした場合に弁護士はこの職務上請求によって戸籍や住民票の写し等を取得することになります(なお、この請求には特別の用紙が必要で、弁護士と名乗るだけでとれるわけではありません。)

上記根拠規定からも明らかなとおり、戸籍の取得も住民票の取得も、弁護士が事件を受任していることが要件となります。

ごくまれに、住民票だけ取得してほしい、とか戸籍だけ取得してほしい、などのご要望をいただくことがありますが、事件の受任が必要となりますので、こうしたご要望に応じることはできません。