はじめに

 公正証書遺言、自筆証書遺言を作成しただけでは、遺言の内容は直接的には実現されません。法律上、遺言の内容を実現させるための制度として、遺言執行者という制度が用意されています。本稿では、遺言執行者の概要について説明します。

遺言執行者とは?

 遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための手続きや行為を行う者をいいます。遺言執行者は、民法上定められています(民法1006条1項参照)。

遺言執行者が選任される方法

 遺言執行者の指定・選任の方法として、①遺言による指定と、②家庭裁判所による指定があります。
 ①遺言書を作成した人は、遺言書の中で遺言執行者を指定したり、第三者に遺言執行を委託することができます(民法1006条1項)。
 ②遺言による指定がない場合、相続人・受遺者等の利害関係人の請求により、家庭裁判所が選任する場合もあります。その場合、必要な書類(家庭裁判所へ遺言執行者選任の申立書等)・印紙を用意し、資料とともに家庭裁判所へ提出する必要があります。

遺言執行者候補者に選ばれたら?

 家庭裁判所に遺言執行者に指定・選任された場合、必ず、遺言執行者に就任しなければならないということはありません。なぜなら、遺言執行には、専門的な知識や労力等の負担たかかるため、遺言執行者に指定・選任された人の意思を尊重する必要があるためです。
 

※遺言執行者候補者について放置すると危険!

 遺言執行者選任候補者に選ばれた人が、その候補者選任通知を放置し、いつまで経っても遺言執行なされない状況が続くと、相続人等に不都合な結果となります。この不都合を解消するため、利害関係人は、遺言執行者に指定・選任された人に対して、相当な期間を定めたうえで、遺言執行者に 就任するかしないかを回答してもらうよう求めることができます。そして、その期間内に確答がない場合、遺言執行者への就任を承諾したものとみなされます(民法1008条)。
 「みなされる」ので、期間経過後に「遺言執行者になるつもりはなかった」と主張しても、その時点では遺言執行者として就任したことに承諾したものと扱われます。

遺言執行者の辞任・解任

辞任

 遺言執行者は、自由に辞任することができません。なぜなら、遺言執行者の職務は、遺言の内容を忠実に実現するという重要なものであるからです。
 もっとも、「正当な事由」がある場合に限り、遺言執行者は家庭裁判所の許可を得て辞任することができます(民法1019条2項)。

解任

 遺言執行者の解任は、自由に行うことができません。遺言執行者の解任は、「正当な理由」のある場合に限り、家庭裁判所に請求し、家庭裁判所が解任を認めた場合に行うことができます(民法1019条1項)

遺言執行者の報酬

①遺言により報酬が定めてあれば、その内容によります(民法1018条1項但し書き)。
②遺言に報酬の定めがない場合、遺言執行者と相続人の間で協議して報酬を定めることができます。
③①と②の方法により報酬を定めることができない場合、家庭裁判所に申し出ることにより、家庭裁判所が、財産の状況その他の事情によって適正な報酬額を決定します(民法1018条1項本文)。 

弁護士に依頼できること

 遺言を作成する人は、弁護士に遺言執行者への就任を遺言作成時に委任するこができます。
 また、遺言執行者の指定がない遺言書を見つけた相続人は、弁護士に遺言執行者への就任を委任し、遺言の内容を実現することができます。

さいごに

 遺言執行は、子どもの認知・不動産登記等の専門的な知識を要します。そこで、少しでも遺言内容の実現に不安を感じたのであれば、弁護士へ相談することおすすめします。
 北九州・小倉の法律事務所であるひびき法律事務所では、若手弁護士からベテラン弁護士まで在席しており、相続に関して様々なお悩みに対応可能です。少しでも相続や遺産に関して悩み・不安があるようでしたら、ご気軽にご相談ください。