はじめに
前回の記事で、遺産分割協議の対象となる(なりうる)財産について説明しました。円滑な遺産分割を実現するためには、遺産分割協議の対象となる(なりうる)財産の価値を評価しなければなりません。そこで、本稿では、遺産分割協議対象となる(なりうる)財産の評価方法について説明させてもらいます。
評価方法
円?ドル?ポンド?
基本的に、財産評価の方法として円で換算されることが多いです。一方がドルで、もう一方で円でとなると、財産評価が煩雑になり、円滑な遺産分割協議という目的にそぐわなくなるためです。
いつの時点の価値?
遺産分割時点を基準に評価します。
確かに、相続は死亡により始まる制度であることに照らせば、死亡時を基準に判断することも一理あると思われます。しかし、株価の変動等の価値の変動が生じていた場合、死亡時から遺産分割時までの差額の利益・損失を誰かが負担しなければならなくなります。これでは、公平な遺産分割が阻害されてしまいます。そこで、遺産分割の価値を定める場合、遺産分割時点を基準にしまし。
具体例
以下で、それぞれの遺産について、どのように評価されることが多いのかをみていきましょう。
預貯金債権
残高証明書の残高額を評価額とすることが多いです。
上場株式
取引相場により決めます。
遺産分割時点を予想して直近の日付の価格、遺産分割時の終値、一定の期間の平均をとる等の様々な方法があります。それぞれの方法のうち、相続人間で協議をし、評価方法を定められます。
非上場株式
上場されていない株式ですので、評価方法は複数あります。具体的には、①将来の収益を予想して株価を定める収益還元方式、②会社の純資産を元に計算する純資産方式、③事業内容が類似する上場会社を参考にする類似業種批准方式、④会社の配当をもとに計算する配当還元方式です。
土地
複数の評価方法があります。
相続税路線価、固定資産税評価額、公示価格のどれかを参考にして定める方法、土地家屋調査士に評価を依頼した結果により定める方法などがあります。
建物を借りる権利(賃借権)
建物を借りる権利、すなわち賃借権は、遺産としての価値はないと評価されることが多いです。
配偶者居住権
不動産鑑定士による鑑定があります。他には、法務省に簡易な算定方法が掲載されております。
※配偶者居住権とは、配偶者が相続開始時に居住していた建物に、その後も無償で居住し続けることが認められる権利のことをいいます。
最後に
遺産の評価方法は、ある遺産については○○というように一義的には定められていないことが多く、遺産の評価方法を定めるだけでも大きな得損が生じてしまう可能性があります。遺産分割協議について、弁護士は、複数ある方法のうちから依頼者にとって有利な方法を選び相手方に対し主張することになります。そのため、遺産分割協議をご検討の場合、弁護士に相談・依頼されることをお勧めします。
北九州・小倉の法律事務所であるひびき法律事務所は、若手からベテランまで在籍しており、さまざまなお悩みに対応可能です。お気軽にご相談へいらしてください。