死んだ人(故人)の借金はどうなるの?

 人が亡くなると相続が発生します(民法882条)。相続により、故人の財産と借金は相続人に引き継がれる(承継される)ことになります(民法896条)。そうすると、故人の借金は、相続人に承継されることになります。
 例えば、故人に200万円の借金がある場合、相続人が借金200万円を承継することになります。
【民法第882条 相続は、死亡によって開始する。】
【民法第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。】

借金を承継しないためにはどうすればいいの?

 相続人が何もしなければ、借金は単純承認というかたちになり、相続人が借金を承継することになります(民法921条2項)。そのため、相続人は、借金を承継しないために相続放棄をしなければなりません(民法915条1項)。
【民法921条(法定単純承認)
 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。】
【民法915条 (相続の承認又は放棄をすべき期間)
1 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。】

相続放棄はどうやってするの?

 相続放棄は、故人の死亡した場所を管轄とする家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。相続放棄の申述をする際には、相続放棄の申述書・相続放棄をする人の戸籍・故人の生まれてから死亡までの戸籍等が必要になります。

具体的にはどんな戸籍が必要か?

【共通】

1. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票

2. 申述人(放棄する方)の戸籍謄本

【申述人が,被相続人の配偶者の場合】

3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【申述人が,被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)の場合】

3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

4. 申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【申述人が,被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】

3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

5. 被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【申述人が,被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】

3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

5. 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

6. 申述人が代襲相続人(おい,めい)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

注意すること

 相続放棄は原則として、亡くなったのを知った日から3ヶ月以内にしなければなりません(民法921条2号)。相続財産の調査などに時間を必要とし、知った日から3ヶ月を超える場合、3ヶ月を超える前に家庭裁判所に期間の延長を申し出なければなりません。

さいごに

 相続放棄は、戸籍を集める必要があり、その手続きが煩雑な場合があります。弁護士にご依頼されれば、戸籍集めなどを代わりにいたしますので、相続放棄の申述を弁護士に依頼されるのもいいかもしれません。
 北九州小倉のひびき法律事務所では若手からベテランまで在籍しており、お気軽にご相談ください。