株式を複数人で相続したときは、どのような法的性質になるの?

1 そもそも株式とは?

 株式とは、株主としての資格において会社に対して有する地位を意味します。株主は、株式を保有することにより、剰余金の配当を受ける権利(会社法105条1項1号)、残余財産の分配を受ける権利(同条項2号)、株主総会における議決権(同条項3号)を有します。
 例えば、A社(総株式数1000)があります。甲さんは、A社の株式を100株有しています。この場合、甲さんは、A社が1000万円の配当をする場合100万円を受ける権利を有し、残余財産1000万円を分配する場合100万円の分配を受ける権利を有し、株主総会で100株分の投票をすることができます。これらの地位を意味するのが、会社法上の「株式」というものになります。

2 株式を複数人で相続したときは、どのような法的性質になるの?

 株式に含まれる(1)のような権利の内容及び性質は、相続により当然に分割するものではないと解されています(最判昭45.1.22民集24.1.1、(以下、「昭和45年判決」といいます。))。そのため、株式を複数人で相続した場合、その株式は、共同相続において準共有(民法264条)されることになります。
 ※注意
 例えば、A社(総株式数1000)の株式のうち、100株を乙・丙で相続しました。株式の準共有は一株ごとに成立するため、この場合、乙と丙は50株ずつ権利を有するのではなく、乙と丙は100株全体を準共有していることになります。

株主総会決議取消しの訴え・株主総会決議無効・株主総会決議不存在の訴えの際に株主が死亡した場合の取り扱い

1 株主総会決議取消しの訴え

 会社法上、株主総会決議取消しの訴えを提起することができる者は「株主等」と(会社法831条1項)定められています。また、民事訴訟法上、原告たる株主が訴訟の途中で株主たる地位を失った場合、この原告は当事者適格を欠くとして、訴え却下となります。
 もっとも、昭和45年判決は、株式は株主総会における議決権などの共益権を有することを判示したうえで、原告たる株主が訴訟の途中に死亡した場合、相続人が被相続人の訴訟の原告たる地位を承継する旨を判示しています。そのため、原告が訴訟の途中で死亡しても、相続人が原告たる地位を承継することになります。

2 株主総会決議無効・株主総会決議不存在の訴え

 会社法上、株主総会決議無効の訴え・不存在の訴えの原告を誰が行うかについて明文の規定がありません。
しかし、昭和45年判決、最判平成2年12月4日判決、最判平成9年1月28日判決の考え方からすると、原告が訴訟の途中で死亡しても、相続人が原告たる地位を承継すると解することになります。
※注意
 最判平成2年12月4日判決、最判平成9年1月28日判決は以下のように判示しています。
 株式の準共有者(株式を相続により複数人で持っている者)は、権利行使する場合には、特段の事情がない限り、権利行使者の指定(現行会社法106条本文)が必要であると判示しています。

最後に

 株式を複数人で相続した方が会社を訴えようとする場合、上記のような原告適格という訴訟要件を満たしているか、すなわち、権利行使者の指定をしているか又は、会社の同意後に準共有者同士で話し合っているかどうかが大変重要になってきます。
 また、会社側で訴訟のディフェンスをする場合、訴えてきた側の原告適格(訴訟要件)を満たすかを吟味する必要があります。
 このとおり、株式を複数人で相続した場合に訴訟を提起したい又は会社側でディフェンスしたいときは、難しい法的問題を抱えているので、弁護士に相談されることをお勧めします。
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