宗教法人による事業

 Q 宗教法人は事業をできますか?
 宗教法人は事業をすることができます。
 宗教法人法1条1項には、「この法律は、宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的とする。」とあり、宗教法人が事業を行うことを前提としています。
 Q 宗教法人は、どんな事業でも行うことはできますか?
  宗教法人は、どんな事業でも行うことができません。すなわち、宗教法人ではできない事業もあります。
  宗教法人法6条2項では、「宗教法人は、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができる。」と定められており、宗教法人は、宗教法人の目的に反する事業を行うことはできません。宗教法人における「目的」とは、教義の布教などの宗教的行為を意味します。そのため、宗教法人は、株式投資などの投機的性格を有するもの、風俗営業などの事業、事業規模が多岐・世界にわたるような事業を行うことはできません。
 Q 事業により生じた収益の使用について制限はありますか?
 宗教法人の主な目的は教義の布教などであり、事業は主な目的を支える従たるものです。
そのため、事業により「収益を生じたときは、これを当該宗教法人、当該宗教法人を包括する宗教団体又は当該宗教法人が援助する宗教法人若しくは公益事業のために使用しなければならない。」と定められています(宗教法人法6条2項)。
 Q 事業を行う場合に必要なことはありますか?
 事業を行う場合には、宗教法人規則に行う事業の種類及び管理運営に関する事項を定めなければなりません(宗教法人法12条1項7号)。そのため、すでに宗教法人規則があり、かつ、事業について何ら定めていない場合、宗教法人規則を変更しなければなりません。
 また、宗教法人法52条2項1号には、登記すべき事項として「目的(第六条の規定による事業を行う場合には、その事業の種類を含む。)」と定めています。そのため、宗教法人が事業を行う場合、当該事業について登記しなければなりません。

宗教法人の合併

 Q宗教法人は合併することあるのですか?
  あります。宗教法人法にも宗教法人が合併することを前提とした規定があります(宗教法人法32条)。
 Q宗教法人の合併ってなんですか?
  2つ以上の宗教法人が1つの宗教法人となることです。
 Q合併のメリットってなんですか?
 合併の手続きがない場合、財産等を譲渡するためには、宗教法人をいったん解散し、解散後に残った財産を別の宗教法人に引き継ぐという方法をとる必要があります。この方法では、煩雑であり時間もかかってしまいます。合併手続きをとることにより、このデメリットを回避することができます。
 Q合併すると、権利義務関係はどうなるのですか?
  消滅した宗教法人の権利義務を合併後の宗教法人が受け継ぎます。宗教法人法42条では、「合併後存続する宗教法人又は合併に因つて設立した宗教法人は、合併に因つて解散した宗教法人の権利義務(当該宗教法人が第六条の規定により行う事業に関し行政庁の許可、認可その他の処分に基いて有する権利義務を含む。)を承継する。」と規定しています。

さいごに

 宗教法人で事業を行う場合や合併を行う場合、さまざまな法定手続きを経る必要があり、手続後の法的効果はわかりにくいです。そのため、事業を行う場合や合併を検討される場合、一度、弁護士に相談されるのをおすすめします。
 北九州小倉のひびき法律事務所では、若手からベテランまで様々な弁護士が在席しております。気軽にご相談にいらしてください。