遺言とは

遺言とは、亡くなる方(被相続人)による死後に向けた自身の意思決定をいいます。遺言書とは、その意思決定を書面の形に残したものをいいます。遺言で決められるのは以下のとおりです。

・相続分の指定(民法902条)

・相続財産の分割方法の指定(民法908条)

・認知(民法781条2項)

・未成年後見人の指定(民法839条)

・推定相続人の廃除(民法893条)

・推定相続人廃除の取り消し(民法894条)

※本来相続人でない者を相続人として指定することはできません。

遺言の解釈方法

最高裁判所昭和30年5月10日判決は、遺言の解釈方法について「意思表示の内容は当事者の真意を合理的に探究し、できるかぎり適法有効なものとして解釈すべき」と判示しています。

また、最高裁判所昭和58年3月18日は、「遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。」と判示しています。

これらの最高裁判例は、遺言の解釈方法は、遺言者が遺言時に本当に思っていたことを探求すべきとしています。そして、遺言者の本当に思っていたことを探求する手がかりとして①遺言書の形式、②問題となっている記載と全記載との関係、③遺言者の遺言時の状況、④その他の事情を考慮すると判示しています。

※決して、遺言の問題となっている条項の形式のみで判断しないということに注意です。

遺言の解釈が問題となった裁判例

(1)事案(東京地裁令和3年11月25日判決)

亡くなった方:Xさん

相続人:A・C(Bの子)・Dさん

Xさんは、「甲建物を、AとBに相続させる」遺言をしたが、BはX死亡前になくなって居ました。そこで、Dは、Bが死亡しているため「甲建物を、AとBに相続させる」という条項は無効であるとして争った。

(2)裁判所の判断

裁判所は、BさんがXより先に亡くなっているからといって問題となっている条項が直ちに無効となると判断できない。本件において、全体の記載からするとBがXより亡くなっていたからといって問題となっている条項を無効にする事情はなく、Xが特別の意思表示をしていた事情もないため、BがXより先になくなっていたとしても問題となっている条項は有効である。

(3)結果

代襲相続人であるCは、問題となっている条項により甲建物を代襲相続することができるようになります。

最後に

遺言書の解釈は難しく、専門的な知見が必要な場合も多いです。また、形式的に遺言書の条項に反する状況になっていたとしても、当該条項が有効であるか無効であるかはなかなか判断するのが難しいのが現状です。そのため、遺言書についてお悩みがございましたら、一度、信頼できる弁護士にご相談されるといいかと思います。

北九州市小倉のひびき法律事務所では、若手からベテランまでさまざまな弁護士がいますので、お気軽にご相談へいらしてください。