債務額を争いつつ遅延損害金を生じさせない方法に関する裁判例を紹介します。

事例

XはYに対し、以下の条件で1000万円を貸し付けた。その後、Xは、Yに対し、1000万円の返還を求める裁判を起こした。Yは、借りた額は100万円であると争っている。

貸付日:令和3年4月1日

返済日:令和4年4月1日

遅延損害金;年14.8%

遅延損害金とは

遅延損害金(遅延利息)とは、債務について、債務者が履行を遅滞したときに、損害を賠償するために支払われる金銭をいいます。今回の事例ですと、令和4年4月2日から生じるYのXへ支払わなければならない金銭をいいます。

遅延損害金の発生

遅延損害金は、一般的に約上利息より高く設定されていることが多く、裁判の期間が長くなればなるほどYがXに支払う額は多くなります。例えば、裁判での決着が令和5年4月2日になると、Yは、Xに元本及び遅延損害金を合わせて1148万円を支払わなければならなくなります。

遅延損害金を発生させない方法

Yは、Xへの遅延損害金を発生させない方法として、債務の存在を争いつつ1000万円を供託するという方法があります。

債務の存在を争いつつ行う給付は留保付き弁済ともよばれ、かつては弁済(支払い)を法律行為と考え方からすると弁済意思があったのか問題になりました。現在では、給付が客観的に債務内容に適合するなら弁済(支払い)とみられるようになっていることから、「債務の存在を条件として」という留保を付して弁済したからといって弁済の効力に特に影響はなく、債権者は留保付きであることを理由として弁済を拒絶できないと解されています。

供託をすると、弁済者が供託をしたときに、供託する対象となった債権は消滅します(民法494条1項)。そのため、仮に、Yが負けても遅延損害金は発生しない結果となります。

参考裁判例:東京地判令和3年8月30日

留保付き弁済(供託)の実益

留保付き弁済(供託)をすることにより敗訴したときに備えて遅延損害金の発生を防ぐという実益があります。会社間の訴訟などの問題となっている額が大きい場合に、当該実益は大きくなります。

そのため、会社間での訴訟が起きている場合、どのような方法が考えられるのか一度信頼できる弁護士に相談されるといいと思われます。

北九州小倉のひびき法律事務所では、若手からベテランまで様々な弁護士が在席しておりますので、気軽にご相談ください。