北九州では、高齢化社会が進行しており、高齢者の生活の保持が喫緊の課題となっています。
特に、高齢者の方に収入が乏しい場合、その生活費をどのように確保するかは高齢者本人や、傍で支える家族にとって重要な問題の一つです。
扶養義務について
上記のような場合に関し、民法は、「扶養義務」という義務を直系血族や兄弟親族に課しています。
① 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
② 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
③ 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
民法が定める「直系血族及び兄弟姉妹」の互いに対する「扶養をする義務」は、その履行を求めることが可能な義務です。
つまり、現に扶養するのが相当な場合においては、裁判所に対して、扶養請求をすることが可能です。
誰が誰に扶養請求をするのか。
では、扶養請求は、誰が誰に対してするものなのでしょうか。
一つは、たとえば、収入に乏しい高齢の親が裕福な子に請求するようなケースです。親が本人となり、子を相手方として、扶養の請求をしていくことになります。
また、現に、子の一人が、扶養料全額を支払ったという場合、兄弟の経済的状態にもよりますが、その兄弟に、扶養の一部を請求しうる場合もあります(過去に立て替えた扶養料につき、どこまで遡れるかについては見解・判断が大きく分かれています。)。
さらに、直系血族や兄弟姉妹が互いに扶養をしあうケースの他、特別な事情があれば、おじやおばが、裕福なおいやめいに対して(反対もあり得る)扶養請求をすることも可能です。
家庭裁判所に対する手続
親子間で協議が整わないケースで、親が子に扶養を求めていく場合、家庭裁判所に対しては、親が申立人となり、子に扶養を求めて調停/審判を求める申立てをすることになります。
具体的には、管轄の裁判所に家事調停(審判)申立書を提出することになります。
また、兄弟の一人が親の介護費や生活費を賄うため、扶養していた、というケースにおいて、兄弟間で費用負担の協議ができないときは、現に扶養をしていた兄弟の一人は、もう一人の兄弟を相手取って、家庭裁判所に対して、調停/審判の手続をとることになります。
扶養の程度
誰がどの程度負担するかは、まさにケースバイケースで定まります。
家庭裁判所が審判を示す場合、当事者の資力・経済状況・生活状況に応じて、相当な額を裁量で定めていくことになります。
その際に重要となるのは、親の生活・収入・当事者の状況、過去の扶養の状況等を丁寧に裁判所に説明をすることです。
弁護士に相談を
冒頭述べたとおり、扶養料の問題は、高齢化社会がすすむ北九州では喫緊の課題の一つです。
他方で、扶養請求を現に行うには、資料収集・法的手続の追行に際して、専門的手続が必要となる場合が少なくありません。
扶養を巡り合意ができないなどのトラブルが発生した際には、ぜひ一度弁護士にご相談ください。