今回は、店舗やビルにおける転倒事故について解説します。
北九州市内でもしばしば発生している事故の一つです。裁判例などにもしばしば現れる事故態様です。
転倒事故が問題となるケース
転倒事故は、日常生活で遭遇する事故の一つです。
特に問題となることが多いのは、床面・フロアが雨や零れた水などで、濡れていた場合です。
こうした場合、転倒によって大きな怪我がなければ深刻なトラブルにまで発生することは少ない一方で、場合によっては骨折・骨折に引き続く後遺症の残存といった重大な結果が発生するような事案もあります。
こうしたケースにおいては、転倒者と店舗側とで損害の賠償を巡り深刻なトラブルとなりえます。
法律上の責任
店舗床面が濡れていた、あるいは汚れていたことが原因で、転倒事故が発生した場合、被害者が、店舗側に損害賠償を請求するための法律上の構成としては、大きく二つ考えられます。
一つは、土地工作物責任。
これは、土地の工作物(ここではコンビニやスーパーなどの店舗・ビル)が通常備えるべき安全性を備えていない、といった場合(たとえばそもそも通常よりも滑りやすい素材でフロアがつくられているようなケース)において発生しうる当該工作物の管理者等(厳密には占有者等を指す)の責任を指します。
もう一つは、不法行為責任(安全配慮義務違反)。
これは、店舗管理者が客の安全に配慮する義務に違反した場合の責任を指し、たとえば、床面を濡れたまま長時間にわたって放置していた、といったケースで問題となります。
店側の責任は、必ずしも上記に限られるものではありませんが、転倒した者が、被害者として店側に責任を追及する際には、上記のような法的責任を店側に問えるか、を検討していくのが通例です。
裁判上の争点
転倒事故における裁判に際しては、店側の落ち度のほか、転倒した者にも落ち度がなかったか、等がしばしば問題となります。
事故当時の手持ち荷物の状況や、履物、姿勢・歩行の態様などに問題が無かったかが往々にして争われます。
ビルや店側に落ち度がなく、もっぱら、転倒した者の落ち度が原因で事故が発生したという場合、店側に責任を問うことはできません。
他方で、ビルや店側にも落ち度がある一方で、転倒したものにも落ち度があると言った場合はどうでしょうか。
この場合、店側の責任は肯定されますが、その責任の割合は、転倒した者の落ち度に応じて減じられるのが一般的です。
損害賠償の範囲
転倒事故が発生した場合に、損害と認められるものは、ケースバイケースで考えることとなりますが、多くの場合、次のような損害が対象とされます。
なお、⑤、⑥は、転倒事故によって後遺障害が発生・残存した場合です。
➀ 治療費
② 通院交通費
➂ 休業損害(お仕事を休まざるを得なかったような場合)
④ 慰謝料
⑤ 後遺障害慰謝料
⑥ 逸失利益
法的手続
転倒事故における被害者が店舗側に損害賠償を求めるには、次のような手続をとるのが通例です。
➀証拠の収集
↓
②示談交渉
↓
➂訴訟提起などの裁判手続
上記②の示談交渉というのは、話し合いで紛争を解決する手続です。訴訟に至る前に、互いに責任の有無や賠償の範囲に関して折り合いが付けられないか、を協議する手続となります。
②示談交渉がうまくいかない場合、さらに手続を前に進める際には、裁判所の判断を求めて➂訴訟提起に至ることもあります。
ビルや店舗などにおける転倒事故に遭遇したら弁護士に相談を
転倒事故が発生した場合、法的責任の有無や転倒者側の落ち度・損害の範囲などを巡り、往々にして、紛争が激化することがしばしばあります。
また検討の対象も多岐に渡っており、その解決は一朝一夕ではできません。
転倒事故にかかるトラブルに遭遇した場合、ぜひ一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。