ビジネス実務法務入門連載、今回のテーマは「債務不履行責任」についてです。

ビジネスに携わっていれば、「債務不履行」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。

また、ニュースなどでも、○○社がデフォルトに陥ったなどと耳にする機会があるかとおもいます。デフォルトというのは、債務不履行を英語で示した言葉です。

今回は、この債務不履行について説明します。

債務不履行とは

ビジネスの世界で、「債務不履行」というとき、これは、「きちんとした理由がないのに契約によって発生した義務を果たさないこと」を指します。

法律を細かく見ていけば、「契約」以外にも債務が発生する原因はいくつかありますので、厳密な意味では「契約上の義務の不履行」だけを指すのではないかもしれませんが、通常は、契約上の義務の不履行を指すと考えて差し支えありません。

たとえば、売買契約をしたけれども、きちんとした理由がないのに、買主が、契約通りにお金を支払わないとか、反対に、売主が、商品を納品しない、といったことがこれに該当します。

他にも、物の賃貸の契約をしていたところ、きちんとした理由なく、借主が賃料を払わない、あるいは決められた時期に物を返還しない、といった事情がこれにあたります。

義務の不履行に関する責任が発生しない場合

債務不履行の概念につき、上記では、「きちんとした理由がないのに契約によって発生した義務を果たさないこと」と説明しました。

単に、「契約上の義務を果たさない」だけでなく、「きちんとした理由がない」ことが概念に含まれます。

これを、大雑把に言いかえれば、正当な理由があれば、契約上の義務が果たされなくても、債務不履行にはならない、ということを意味します。

たとえば、売買の例で、売主が、代金を受け取ってから、商品を納入すればよい、という契約になっていた場合、売買代金が支払われるまで、売主が商品を納入しなかった(義務を果たさなかった)としても、売主は債務不履行とは評価されません。

「代金が先払いとされていた」というきちんとした理由のもとで、売主は商品を納入しなかったのですから、この場合において、売主には債務不履行責任は発生しません。

3つの類型(種類)

ここまで、債務不履行責任について、ひとくくりで説明をしてきましたが、債務不履行は、概念上さらに次の3つの類型に分けることが可能です。

➀履行遅滞
➁履行不能
➂不完全履行

➀ 履行遅滞

履行遅滞というのは、契約上の義務の履行が期日までになされなかったことを言います。

たとえば、1週間後までに、お金を返すと約束していたのに、1週間たってもお金を返さなかったケースがこれに該当します。

➁履行不能

履行不能は、契約上の義務を実現することができなくなることをいいます。

たとえば、売買の対象となった壺を不注意で割ってしまったなどのケースがこれに該当します。

➂ 不完全履行とは

不完全履行は、一応契約上の義務を履行したけど、それが不完全・不十分な場合を指します。

たとえば、AがBにホームページの作成を依頼し、Bが現にホームページを作成したけど、そのホームページの仕様・機能が契約で定められたものに達していなかった、といったケースがこれに該当します。

債務不履行が発生した場合、弁護士に相談を

現に債務不履行が発生した場合、請求できる内容は事例・ケースごとに異なるものの、債権者は、損害賠償請求や契約の解除などの主張を行い、その責任を債務者に問うことができます。

実際上、ビジネスの世界において、小さな不履行については、不問とすることもしばしばありますが、大きな不履行となればこれを放置はできません。

具体的な内容は、ケースごとにことなるため、いかなる請求をすべきか、一概には言えませんが、債務不履行が発生した場合、その対応につき、一度弁護士に相談されることをお勧めします。