今回は、駐車場内の出会頭事故に関する過失相殺の考え方についてです。

駐車場の通路交差部分における事故

たとえば、駐車場内で次のような事故が発生したとします。A車とB車とが、駐車場通路部分で衝突した事故です。

通常の道路に見立てて考える考え方

この場合のA車とB車との過失割合をどう考えるかですが、一つには、「通路」交差部分を、通常の道路の交差点に見立てて判断する考え方があります。

駐車場とはいえ、通路の通行する車両の運転者は、交差する際には、通常の道路と同様の注意義務が課される、という趣旨の考え方です。

この場合、B車からみて、A車は左方にあります。

そして、明確な優先関係がない道路が交差する交差点では、左方優先の原則が働き、往々にして、左側から進行してくる車が優先され、過失割合も左方(上図ではA車)が小さくなると判断される傾向にあります(※1)。

このように、駐車場における通路交差部分を道路に見立てると、通常の道路で機能する原則が駐車場における事故にも作用することになります。

※なお、もちろん、実際の事故では、その他の種々の修正要素が加味されますから、上記の考え方によっても、常にA車の過失が小さくなるというわけではありません

「駐車場」の特殊性を考慮する考え方

他方で、いやいや通常の道路ではない。駐車場なんだから駐車場としての特殊性を考慮しようと、という考え方もあります。

たとえば、裁判所が過失割合を判断する際にしばしば参考にする「別冊判例タイムズ38」(判例タイムズ社)という書籍には次のように記載がされています。

「本基準は,駐車を主たる目的とする駐車場の特殊性,すなわち四輪車が後退,方向転換等等の行為に出ることが多く,駐車している四輪車から歩行者が出てくることも多いため,走行している四輪車に対し,前方注視義務や徐行義務が高度に要求される点(運転慣行)を踏まえて,過失相殺率を定めている」(494頁)

そして、上記書籍では、先ほどの「通路の交差部分における四輪車同士の出会い頭事故」につき、基本的な過失割合として、A車を50%、B車を50%とする基準が定められています(498頁)。

裁判所が過失割合を判断する際にしばしば参考とする上記文献において、駐車場の特殊性が考慮され、A及びB両車両は基本的には同等(※2)の注意義務を負うとされているのです。

※2ここでは、両通路につき、いずれも優先関係がないことを前提とします。

実際の事故における過失割合

駐車場の通路交差部分には上記のような考え方がありますが、実際の事故に際しては、これだけで過失割合が定まるわけではありません。

駐車場の構造、道路幅、車両の速度などが加味されて、過失割合が判断されます。

ここでの弁護士の主たる役割は、依頼者にとって有利な事情を拾い出し、主張を組み立てることにあります。

交通事故の解決にお悩みの場合、一度弁護士に相談されてみてください。事故解決の一助になるはずです。