借金問題に悩む方の中には、いわゆるヤミ金(闇金)からの借り入れに悩む方も少なくありません。
一般的な借金問題の解決支援には、任意整理や自己破産・個人再生といった手段が利用されますが、ヤミ金(闇金)からの借り入れに対しては、これらの手段とは全く異なる対応を要します。
ヤミ金・闇金の特徴
ヤミ金(闇金)と一般的な貸金業者とでは、主に次の3点に違いがあるといわれています。
<闇金の特徴>
① 無登録であること
② 超高金利であること
③ 取り立てが苛烈・執拗であること
無登録であることについて
法律上、貸金事業を営もうとするものは、財務局又は都道府県に対して、貸金事業者として登録をすることを要します(貸金業法3条)
登録制が採用された趣旨は、貸金事業を登録制としたうえで、種々の規制・監督を貸金業者に及ぼそうとする点にあります。
闇金は、貸金業法の規制を無視あるいは意にも介さず、違法な貸し付けや違法な取り立てを行います。
そのため、当然のことながら、闇金は、貸金業法に基づく貸金事業者としての登録はなされません。
なお、正規に登録されている事業者か否かは、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で確認可能です。
超高金利
闇金は、超高金利です。
現在、正規の貸金業者が貸し付けを行う場合、利息制限法の下、金利は年利15%から20%の範囲で設定されます。
これに対して、闇金の金利は、10日で1割(トイチ)、10日で3割(トサン)、10日で5割(トゴ)などと設定されます。
10日で1割というのは、単利で年365%の計算であり、トサンはその3倍、トゴはその5倍です。
また、闇金は、返済日に元金・利息が支払われない場合、利息を含めた金額を新たな元金として複利計算の上で取り立てを行いますので、実質年利としては、さらに途方もない数字になります。
苛烈・執拗な取り立て
また、多くの闇金は、借金の返済を求めて、苛烈・違法な取り立てを行います。
・返済できない場合には、家族に危害が及ぶ、などと脅迫的な言動を繰り返す
・あらかじめ聞き出しておいた職場に執拗に電話をする、
・借り入れた本人ではない家族や友人に対しても返済を迫る
・電話に出ない場合に、昼夜を問わず、執拗に架電が繰り返す
などがその例です。いずれも貸金業法で規制される行為ですが、意に介さずこれらの取り立てが繰り返されます。
ヤミ金に対する返済義務
闇金からの借り入れをしてしまった方が法律事務所や弁護士のところに来所される場合、もう返しきれない、どうすればよいかといって、相談に来られる方がほとんどです。
では、そもそも上記のような闇金からの借り入れに対して、借主は、返済義務を負うのでしょうか。
元利ともに返還義務はない
まず、民法は、その90条において公序良俗に反する行為を無効と定めています。公序良俗に反する行為の典型例がいわゆる暴利行為です。暴利行為は、公序良俗に反し無効となります。
そして、上記のとおり、闇金の貸し付けは超高金利であって、暴利行為に該当します。そのため、闇金の超高金利の貸し付けは公序良俗に反し無効です。
したがって、借主は、闇金と約束をしていたとしても、闇金に対して「利息」を支払う義務を負いません。
また、民法708条は、不法な原因に基づいてなされた給付(これを不法原因給付といいます)につき返還義務を否定しています。
そして、闇金の超高金利の貸し付けは、不法な原因に基づいてなされた給付であるため、借主は、当該給付を返還する義務を負わないと解されます。
したがって、借主は、闇金に対して、利息はおろか、「元金」さえも返還する義務を負いません。
最高裁平成20年6月10日判決
上記に関し、最高裁平成20年6月10日判決も、闇金が著しく高利の貸し付けを行っていた事案に関し、貸付元金部分が不法原因給付に該当する旨、次のように述べています
「著しく高利の貸付けという形をとって上告人らから元利金等の名目で違法に金員を取得し,多大の利益を得るという反倫理的行為に該当する不法行為の手段として,本件各店舗から上告人らに対して貸付けとしての金員が交付されたというのであるから,上記の金員の交付によって上告人らが得た利益は,不法原因給付によって生じたものというべき」である。
以上の通りですから、闇金からの超高金利の貸し付けに対しては、借主は、法律上、利息はおろか元金部分ですら返済義務を負わないということになります。
弁護士に相談を
闇金から、自転車操業的に借り入れ・返済を繰り返していても問題の解決にはなりません。かえって被害が拡大する可能性が大といえます。
上記に述べたように、著しく高金利の闇金の貸し付けに対しては、元利ともに返済する義務がありません。このことを前提に、問題の解決を図ることが必要です。
闇金の違法な貸し付けや違法な取り立てにお悩みの場合には、おひとりで悩まず、早期に弁護士にご相談ください。