監査役について会社役員の一つに監査役という役職が有ります。大企業はもちろんのこと、中小企業においても、監査役が設置されていることは少なくありません。

一方、中小企業において、監査役に就任されている方の中には、監査役という役員の職務の内容やその責任の重さを正確に理解できていない方も少なくないのが現状です。

そこで、この記事では、監査役の地位、監査役の職務の内容、監査役の責任について、説明します。

監査役の地位

監査役は、株式会社における役員の一つです。

会社法上、監査役を設置しなくてもよい会社もありますが、一定の規模を有する中小企業においては、監査役が設置されていることも少なくありません。

監査役は、株主総会で選任されます。任期は原則として4年ですが、一定の会社では、定款で10年まで伸長することが可能です。

株式会社と監査役との関係は、民法でいう委任契約に基づく関係に立ちます。株式会社が一定の事務処理を監査役に委託するという内容です。

委任契約に基づき、監査役は、その職務を行うにあたって、会社に対し、善良な管理者としての注意義務を負います。

監査役の職務・権限の内容

監査役の職務・権限は次のような内容です。

監査役の職務

監査役は、取締役の職務の執行を監査する機関です。監査役は、会計の監査の他に、取締役の業務全般を監査する職責を負います。

取締役の日常的な業務だけでなく、会社の組織等に関する事項も監査の対象になります。監査というのは、要は、違法あるいは著しく不当な職務がなされていないかチェックすることです。

監査役には、上記監査を通じて、取締役の職務執行の適法性あるいは著しい不当性をチェックすることが会社法上、期待されているといえます。

監査役の監査権限

上記監査の実効性を担保するため、監査役には、種々の権限が付与されています。

・取締役や使用人(従業員)等に事業の報告を求める権限(会社法381条2項)
・株式会社の業務及び財産状況を調査する権限(会社法381条3項)
・一定の場合に取締役会を招集する権限(会社法383条2項)
・一定の場合に取締役の行為を差し止める権限(会社法385条2項)
・取締役及び会社間の訴訟において会社を代表する権限(会社法386条)
などなど

監査役の独立性

 監査役が上記のような職責を全うするためには、監査役が、業務執行機関とは独立して、監査業務を行うことが必要です。

そこで、法は、監査役の独立性を担保するため、次のようなルールを定めています。

・監査役と取締役等との兼任の禁止(会社法335条1)
・監査役の解任決議要件の厳格化(会社法309条2項7号)
・監査役の報酬と取締役の報酬との区分決定(会社法387条1項)
などなど

さらに、監査役には、別途、株主総会にお解任・辞任について意見を陳述する権限(会社法345条4項)も付与されています。これも監査役の独立性担保のための制度の一つです。

監査役の責任

監査役の責任監査役は、株式会社に対して、上記のような職責を負うとともに、その職責を全うするために独立した法的地位が付与されています。

また、一定の場合には、監査役としての権限を行使することも期待されています。

しかし、その一方で、監査役が、その職務を怠り、株式会社や第三者に損害を与えた場合、監査役は重い責任を負うことになります。

会社に対する責任

まず、監査役が、その任務を怠ったときは、その職務懈怠によって株式会社に生じた損害を賠償する責任を負います(会社法423条1項)。

たとえば、代表取締役が、業務執行を行うに際して、横領・背任などの違法行為を繰り返していたところ、監査役が漫然とその監査を怠ったことにより、会社の損害が拡大した場合などにおいては、上記規定により監査役が責任を問われうることになります。

第三者に対する責任

さらに、監査役は、その職務を行うにつき悪意又は重過失があったときは、これにより第三者に生じた損害を賠償する責任を負います。

放漫経営を監査役が漫然と放置していたような場合、この第三者に対する監査役の責任が生じ得ます。

特に、放漫経営などにより、会社が破産・倒産に至った場合、その責任が顕在化しがちです。

まとめ

以上のように、会社法上、監査役には重要な職責が課されています。

また、その責任を怠った場合における民事的な責任は、個人が負う責任としては極めて大きな責任になりがちです。

そして、その責任は知らなかったでは済まされません(知らなかったこと自体が問題となり得る)

既に監査役に就任されている場合には、その職務の内容や権限、責任の内容を今一度確認し、法が求める内容が充足されているか、ご検討されてみてください。

その結果が、ひいては会社の維持・発展につながります。