企業が有効に契約をしようとした場合、企業が気を付けなければならない法律上のルールがあります。
そのもっとも基本的なルールの一つが、契約の有効要件に関するルールです。
当然のことながら、契約は、当事者間で合意さえすればどのような合意でも有効である、というわけではありません。
どんな契約をする場合でも、その内容に関して、守らなければならない一定の条件があります。これを契約の一般要件と言います。
契約の一般要件が守られていなければ、契約は効力を有しません。
4つの一般要件
契約の一般要件は、大きく次の4つに分類されます。
①確定性があること
②実現可能性があること
③適法性があること
④社会的妥当性を有すること
①確定性があること
契約を成立させる場合、その契約が有効であるといえるためには、第一に契約の本質的な内容が確定していることが必要です。
たとえば、単に「パソコンを売買する」というような契約をしても、そのパソコンが新品のパソコンなのか、中古のパソコンなのかがわかりません。
また、パソコンの種類も特定されていません。そのため、この契約では、当事者がどういった内容の売買契約を締結したのか、確定していないといわざるをえません。
こうした場合、この契約は成立していない、あるいは無効なものと判断され、法的拘束力をもちません。
もちろん、外部的な事情により、売買の対象となるパソコンを特定・確定できれば別ですが、そうでない限り、実際の引き渡しなども困難でしょう。
②実現可能性があること
契約の一般要件の二つ目は、実現可能性があることです。
契約が有効であるといえるためには、その契約が実現可能な契約でなければなりません。
たとえば、ある家屋について売買契約を締結した際、その売買契約の締結に先立って、火災でその家屋が焼失していたとします。
この場合、契約時にはすでに当該家屋は存在ないということになりますから、その売買契約には実現可能性がありません。そのため、その契約は無効です。
なお、契約締結後に、当事者に帰責性なく家屋が滅失した場合には、危険負担という考え方によって処理され、契約自体は無効とはされません。
契約成立前に消失したか、契約成立後に消失したかで、その処理が大きく異なることになります。
③適法であること
契約は、当事者間の意思に基づくものですので、当事者間で合意さえできれば、法律に定められたもの以外の内容を定めることも可能です。
ただ、日本では、政策的な観点などから、当事者間の合意によっても変えることのできない事項が法律で定められている場合があります。
このような当事者が合意しても法律の規定が優先され、その内容を変えることができない法律の規定を強行法規といいます。
そして、この強行法規に違反する契約の条項は無効な条項として扱われます。
たとえば、労働者の最低限度の権利義務を定めた労働基準法には、強行法規が数多く含まれています。
したがって、労働基準法に定める労働条件を下回る条件でなされた労働契約は、労働基準法に反する限度で無効と扱われます。
④社会的妥当性を有すること
また、契約が有効性を有するためには、最低限度の社会的妥当性を有しなければなりません。
たとえば、暴利行為等は、公序良俗に反する契約として、無効なものと扱われます。
また、他にも、たとえば、企業が損害賠償額の定めの予定や違約金などを定めるに際して、その金額が法外な場合には、社会的妥当性を欠くものとして契約の有効性が否定される場合があります。
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
契約書の作成等につき、一度弁護士にご相談下さい。
上記4つのルールは、契約の内容に関わるルールですが、実際に契約をきちんと成立させるためには、上記に挙げた以外にも、種々のルールの順守が求められます。
たとえば、契約の当事者に関するルール(たとえば未成年者との取引に関するルール)や、契約の意思表示(たとえば、錯誤に関するルール)に関するルールも遵守することが求められます。
契約の成立や効果の有無を巡るトラブルを防止するためには、上記契約の一般要件の他、こうした契約に関するルールに留意して、契約書の作成にあたることが必要です。
弊所では、契約書の作成や、契約書の内容の精査、取引に際して留意すべき点等に関する法的助言を業として承っております。
契約書の作成にご不安・お悩みの場合には一度ご相談ください。