遺産分割協議前・協議中の固定資産税は誰の負担?

遺産の中に不動産があった場合、当該不動産には、固定資産税が発生します。今回はこの固定資産税についてです。

遺産分割協議前に発生していた固定資産税

まず、被相続人が亡くなった際に、当該年の固定資産税が未納のままだった場合についてです。

固定資産税は法定相続分に応じて按分される

複数人が相続をする場合、原則的には、法定相続分にそって、債務も承継することになります。固定資産税についても同様と考えられ、相続人が複数である場合は、各相続人の納税義務は、民法において定められた法定相続持分に応じて按分された額になります。

参照 地方税法9条
第1項
相続(包括遺贈を含む。以下本章において同じ。)があつた場合には、その相続人(包括受遺者を含む。以下本章において同じ。)又は民法(明治29年法律第89号)第951条の法人は、被相続人(包括遣贈者を含む。以下本章において同じ。)に課されるべき、又は被相続人が納付し、若しくは納入すべき地方団体の徴収金(以下本章において「被相続人の地方団体の徴収金」という。)を納付し、又は納入しなければならない。ただし、限定承認をした相続人は、相続によつて得た財産を限度とする。
第2項
前項の場合において、相続人が2人以上あるときは、各相続人は、被相続人の地方団体の徴収金を民法第900条から第902条までの規定によるその相続分によりあん分して計算した額を納付し、又は納入しなければならない。

代表相続人が支払うことが多い

もっとも実務的には、各自が支払うというケースはまずありません。

固定資産税について、地方税法は、9条の2で、①相続人らが代表相続人をさだめることができる、➁一定の場合には、地方団体の長は、相続人代表者を指定することができるなどと定めています。

実務的には、この規定に基づいて、相続人代表者が納付を行うことが多くなっています。

 

代表相続人が支払った場合

被相続人他界前に発生した固定資産税につき、現金・預金などの流動資産があれば、代表相続人においては、他の相続人らと協議の上、遺産からこれを支払い、残余を遺産分割協議で清算するのが合理的です。

他方で、代表相続人が一旦、自分のお金で支払いをした場合はどうでしょうか。

この場合、代表相続人は、その立替分について、遺産分割協議による調整や、民事上の手続により、本来、他の相続人が負担すべきであった部分を他の相続人に請求していくことになります。

もっとも、代表相続人が、相続開始前後を通じて、当該不動産を利用している場合、別異の検討が必要になります(後述参照)。

 

遺産分割協議中に発生した固定資産税について

次に、遺産分割協議中に発生した固定資産税についてです。

相続人が連帯して納税義務を負う

遺産分割胸中、未分割の不動産にも、固定資産税がかかります。1月1日時点で未分割であった場合、相続人らが固定資産税を負担する義務を負います。

そして、対自治体との関係では、相続人ら全員が、連帯して納税義務を負うことになります。

参照 地方税法10条の2第1項
共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。

ただし、実務的には、やはり代表相続人がこれを納税することが多いです。

一旦納税がなされた場合の清算について

代表相続人が一旦納税した場合、次に問題となるのは、一旦代表相続人が納税した固定資産税をどのように精算をすればよいか、という点です。

まず、遺産分割協議において、相続人全員が同意するのであれば、いかようにでも調整を行うことができます。

また、遺産分割審判においても、家庭裁判所は、民法885条や906条を手掛かりに、遺産分割の手続において清算を図っていることが多いように思われます。

原則論的には、相続分に応じて、各相続人が負担すべきものであり、応分の負担とされることが多いと思われます。

もっとも、たとえば、代表相続人が、当該不動産を使用し続け、納税も行った、というケースでは、別異の検討が必要です。たとえば、代表相続人に遺産分割協議中、使用利益が生じていることなどが別途、家庭裁判所の考慮対象となり得ます。

この場合、代表相続人が固定資産税を支払っていたとしても、遺産分割の審判においては、立て替え済みの固定資産税につき、別途清算をしない(代表相続人の負担に帰する)という結論となる可能性が相応に残ります。

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