親の面倒を見てきた、相続で有利になる?寄与分は?

今回は、「親の面倒をみた」という事情が相続手続でどのように評価されるか、という点についてみていきたいと思います。

具体的には、①親の身の回りのことを支援してあげていた、②親と同居して親の生活費を負担していた、③親に住居を提供していた、といったケースを解説します。

寄与分について

民法には、相続に関して寄与分という仕組みを設けています。この寄与分は、相続人が、被相続人の財産の形成・増加に特別な貢献をしたといえる場合に、その貢献をした者の取得分を大きくする仕組みです。

寄与分が認められるためのポイントは、被相続人の財産の形成・増加に特別な貢献をした、といえることです。

身の上の世話・金銭支給・不動産の提供

上記を前提に冒頭のケースで、寄与分が認められるかを見ていきましょう。

親の身の回りの世話をしてあげていた

相続人の一人が、親の身の回りのことを支援してあげていた、という場合、たとえば、家に行ってご飯をつくってあげていた、洗濯をしてあげていた、一緒に時間を過ごして、安息の場を与えていたといった場合に、寄与分は認められるでしょうか。

この点、親に、看護・介護を要する事情があり、相続人が上記のような面倒を見てあげることで、親が、看護・介護に要する費用を免れたという場合は、寄与分が認められるケースがでてきます。

参照:親を看護・介護した。相続で寄与分として有利になるか。裁判例は?

他方で、親は健康であり、介護・看護を要する状況になかったという場合に、ご飯を作ってあげた、洗濯をしてあげた、一緒に時間を過ごした、というだけでは、寄与分が認められる可能性は残念ながら低いです。

上記にあげたように、寄与分が認められるためには、被相続人の財産の形成・増加に対する特別な貢献が必要となるからです。

生活費を金銭的に負担していた

では、相続人の一人が、親の生活費を負担していた、親に継続的に仕送りをしていた、というケースはどうでしょうか。

この点、子は、親に対する扶養義務がありますので、子が行った支援が「扶養義務の範囲内での支援」ということであれば、本来、寄与分は肯定されないこととなります。

また、子が行った支援が、その子の扶養義務の負担部分を超えていた場合でも、それは、他の相続人である兄弟姉妹に対して、超過扶養料の支払いを求めるというのが筋であり、本来、遺産を分け合うという場面である遺産分割協議に際して、考慮すべきものではない、との考え方もあるところです。

ただ、実際上、相続の場面で、他の兄弟姉妹が負担すべき部分を清算する、というのは、のは公平の理念に沿いますし、社会通念に照らしてみても、おかしなこととはいえません。

子が親の生活費を相当期間長期にわたって継続的に負担していたという場合、相続に際してこれを清算することも十分理にかなっています。

家庭裁判所においても、実務上、長期にわたって、通常子に期待される程度を超える生活扶助・支援を子がしており、その結果、被相続人の財産が維持されていたという場合には、寄与分を認める傾向にあります。

大坂高等裁判所平成15年5月25日決定
寄与分
審判によっては、過去の扶養料の求償に関する適切な紛争解決が必ずしも保障されているとはいえないから、過去の扶養料の求償を求める場合には、原則として、扶養審判の申立てがされるべきであるといわなければならない。もっとも、遺産分割の機会に、遺産分割に関する紛争と過去の扶養料に関する紛争を一挙に解決するため、過去の扶養料の求償を求める趣旨で寄与分審判を申し立てることが許されないわけではなく、実務上はそのような寄与分審判の申立ても許容されている。・・・もちろん、寄与分が認められた分についてまで、重ねて過去の扶養料の求償が許されることにならないことはいうまでもない。

親に住居を提供していた

では、相続人の一人が親が住む住居を提供していた(親と子は別の住居で暮らしている)、という場合はどうでしょうか。

この場合、親は、住居の提供を受けて、賃料の支払いを免れます。その結果として、遺産が残っていたと言えるのであれば、これを寄与分として認めるのが公平ではないかという価値観が作用します。

住居の提供も子の扶養義務の履行の一環とはいえますが、子に期待される程度を超えて、長期に住居を提供していたというケースであれば、寄与分は認められる余地があるものと考えます。

ただ、上記とは異なり、親と子が同居して住居を提供している、というだけでは、通常、寄与分は認められません。

当該不動産から生じる利益を子も享受していますし、同居としての住居提供は、子に期待される扶養義務の範囲内である、との評価を与えられてしまう傾向にあるからです。

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