相続放棄で土地はどうなる?実際は相当怖い話かも

素朴な疑問の一つとして、相続放棄された土地がどうなるのか、について気になったことはありませんか?

死に土地になってしまうことも

相続放棄した人には、一定の場合、これを管理する義務があります。また、相続財産清算人という制度の下で、国庫帰属することもあります。ただ、これらは、だれかがきちんとした手続をした場合です。

相続放棄された土地、さらに放っておくとどうなるか、これが今日のテーマです。

結論から言うと、誰も管理しない「死に土地」になってしまうことが多いです。

法律が予定している手続

相続放棄という仕組みについては「民法」という法律が規定しています。

相続放棄後の保存義務

民法では、相続放棄した後の財産について次のように規定されています

(相続の放棄をした者による管理)
第904条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

これによると、相続放棄があった場合、土地を現に占有していた者は、次の相続人又は相続財産清算人に引き渡すまでは、その財産を保存しなければならないとされています。要は、「使っていたなら相続放棄しても引き継ぐまでは、その土地保存しておいてね」という規定です。

この規定によれば、現に使っていたなら、相続放棄した人が当面保存し、その保存が随時引き継がれていくことになりますが、現に使っていない場合、その保存義務はだれも負いません。また、相続放棄後、保存義務があるとは言え、この義務が履行されていないケースも多くあります。

相続財産清算人は?

仕組み上は、相続人の一人が相続財産清算人というのを家庭裁判所に選んでもらって、その管理をしていくという方途(相続財産清算人が選ばれれば、国庫に帰属(国の財産になる)というルート)もあります

しかし、相続財産清算人を選んでもらうにも、数十万円~の費用がかかるので、相続放棄後、土地はあるのに誰も相続財産清算人を立てようとしない、ということもたくさんでてきます。

借金を負いたくなくて相続放棄がなされたケースで、さらに相続財産清算人を立てるために数十万円を支払おう、という人は実際上はなかなかいません。

(相続財産の清算人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。

 

社会問題となっている所有者不明土地増価の一端に

法律が予定している制度は、土地について誰かが、ちゃんと保存する、だれもいない時でも、だれかが相続財産清算人を立てるために骨を折ってくれる(家庭裁判所へ請求してくれる)、という割と個人任せな制度となっています。

こうして、だれも管理しない土地が生まれていきます。

都市部の土地で、そこに価値がある場合、相続人や利害関係人が対応することが考えられるので、相続を契機とする「死に土地」は発生しにくいのですが、山林や原野等にいたっては、本当にだれも何の管理もしない。ただただ、そこに土地があるだけ、という状況が生まれてしまうんです。そして、その後、数次相続が繰り返され、登記もされない(これにもお金がかかる)などの結果、今現在、だれが所有・管理しているのか不明という土地がたくさん生じます。

「相続放棄」だけがきっかけではありませんが(単に事実上放棄された土地もたくさんある)、日本では、所有者不明土地が多く存在しています。政府広報によれば、その面積は、九州の面積よりも広いと言われています。実は、そうとう怖い話かもしれません。

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