生前贈与と死因贈与の違い

今回は、生前贈与と死因贈与との違いについてです。

生前贈与

生前贈与は、生きてる間に、妻や子、孫などに財産を譲渡することを言います。民法という法律上は、「贈与契約」によって成立します。

贈与契約が成立するには、贈与する側の「お金や財産を譲渡する」という意思と受け取る側(受贈者といいます。)のお金や財産を受け取る、という意思の合致が必要です。

たとえば、自身が生きている間に、100万円をこどもたちに渡し、子供がこれをうけとる、といった行為が行われるとき、贈与契約が成立しています。

死因贈与との違い

以下、死因贈与との違いを確認しながら、生前贈与の性質を見ていきます。

いつ効力が発生するか

生前贈与は、贈与する側が生きているうちに効力が発生する契約です。これに対して、死因贈与は、「自身が亡くなった場合に、事前に合意していた財産を譲渡する」という内容の契約です。

生前贈与は、生きているうちに効力を発生するのに対して、死因贈与は、亡くなった場合に効力を発生する点に大きな違いがあります。

遺贈の規定の準用

また、民法という法律は、死因贈与については「遺贈の規定を準用する」としています。

死因贈与について

そのため、たとえば、死因贈与契約が行われた場合、契約が口頭で行われた場合であれ、書面で行われた場合であれ、贈与者は、自己の存命中は、原則的には、いつでもこれを撤回することができます(一定の場合には、相続人もこれを取り消せる場合があります。)。

また、死因贈与契約に関し、執行者を指定しておけば、他界の後、死因贈与に関する「執行者」が家庭裁判所で選任されます。

生前贈与について

これに対して、単純な生前贈与には、遺贈の規定は準用されません。そのため、たとえば、、当事者同士が書面で契約をした場合、贈与者側が一方的にこれを取り消すことは原則としてできません(取消をするためには特別な事情が必要)。

また、生前贈与は生存中に行われる贈与ですので、通常、その履行は当事者同士が行います。ここには執行者の関与はありません。

相続税対策としての生前贈与

生前贈与であれ、死因贈与であれ、原則的には課税の対象となります。生前贈与については贈与税の課税対象となり、死因贈与は相続税の課税対象となります。そして、贈与税のほうが相続税よりも税率は高く設定されています。

もっとも、生前贈与については、いくつかの特例で非課税とされる場合があります(1年間の範囲であれば、一定範囲の贈与につき非課税とされるなど)。この非課税措置を利用して、生前贈与は、相続税対策として使われることがあります。

参照:https://chester-tax.com/encyclopedia/863.html(外部サイト)

 

遺留分算定に係る違い

また、生前贈与と死因贈与は、どちらも遺留分の算定に際して、侵害額計算の対象となりうる点で同様ですが、民法の解釈によっては違いが生じえます。

民法では、遺留分の計算に入れられる生前贈与については、次のように定められています。明文で期間制限等が設けられているわけです。

❶相続開始前「1年以内」の相続人以外への生前贈与

❷相続開始前「10年以内」の相続人への特別受益にあたる生前贈与

❸遺留分権利者に損害を与えることを知りながら行われた生前贈与

これに対して、死因贈与については、「贈与」としての性格を重視するか、遺贈的な性格を重視するかによって解釈が分かれえます。

補足:遺留分侵害にかかる負担者
上記と関連しますが、遺留分侵害が発生した場合に誰がその侵害額を負担するかという点につき、若干の補足をします。民法1047条は、遺留分侵害の判断に際して、受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に遺留分侵害額を負担する旨規定しています。

これは、遺留分侵害につき、だれが負担するかを決める順序を定めた規定です。遺留分侵害が発生した場合、受贈者よりも先に受遺者が、受け取った範囲で侵害額分を負担し、それでも回復しない場合、受贈者が、受け取った範囲で侵害額分を負担することとなります。

この点、生前贈与を受け取った者は、上記のうち、受贈者に該当します。他方で、死因贈与については、これを「贈与」的に捉えるか「遺贈(受遺者)」的に捉えるかにつき、見解が分かれえます。

 

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